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教室で1

「あの二人、絶対デキてるわね」
「……なんだよ、いきなり」
 目の前の席でぼんやりと外を眺めていた幼馴染が、ぽつりと呟いた。
 その視線を追ってみると校門へ向かう二人の生徒に行き着いた。
「生徒会長と副会長じゃないか」
 ついこの前、全校生徒の投票で生徒会長に選ばれた女子生徒が
夕日の中、さらさらの髪をなびかせ、隣の男子と話ながら歩いていた。
 隣の副会長とは実は中学からの友人だったりする。
 
 
 お人よし、人畜無害、といった印象の顔の造作で、実際の性格もそんな感じ。
 まあ、クールでばっさりと物を言う会長の相方としては丁度良いかも知れない。
「もう、イクところまでいってると見たわ」
 背を向けている為、表情は見えないが、ニヤニヤしているだろうと見なくても解る声色で彼女が断定する。
「ナオ、あなたもそう思わない?あの二人の間の空気、ただ事じゃないわぁ」
「別にどうでもいいよ」
 あの美人の生徒会長と「イクところまで行ってる」ならそれは羨ましい話だが……
100Mは離れてるのに二人の間の空気が見えるのか?
「それよりも、とっととこれ、片付けようぜ」
 先ほどから動きが止まってしまったシャーペンの先で机の上のプリントを叩いた。
「嫌な事思い出させないで」
 相変わらず背を向けたままで返事をしてくる。
「忘れたままだと学校で夜を明かすことになるかもしれんぞ」
「わかったわよぅ、もう……受け持ち分はおわ……あっ!」
 いきなりの大声に反応し、校庭を見てみると、副会長が会長の顔?頬?を撫でていた。
 会長は特に嫌がるでもなく、されるがままに撫でられているように見える。
 流石に表情までは見えないが……確かにこれは。
「やっぱり!やっぱりよ!」
 がばっと彼女が振り返った。
 短くしている髪がふわりと広がるほどの勢いだ。
 普段から大きな丸い目をさらにランランと見開き、輝かせていた。
「嬉しそうだな、サキ……」
「前から噂にはなってたのよ!」
 本当に嬉しそうだ。
「そ、そうなのか?」
「んふふぅ…生徒会長とは同じクラスなのよ~。明日なんて言ってからかおうかなぁ」
「からかうってお前…やめとけよ」
「なんでよ~ウチの学校みんな大人しいから、こういう話に飢えてんのよ~」
 唇をヘの字に曲げて、アヒルのように突き出し、ご不満の表情を作る。
「観察するだけにしとけ」
「なによさっきから~!私と同じテスト前補習組の癖して、真面目ぶっちゃって!」
「俺はとっとと帰りたいんだよ!ほら!俺の担当は終わったぞ!はやくやれよ!」
 さっき下校を促す放送があったが、プリントを終わらすまでは帰れない。
 前半と後半で手分けして作業し、写し合う予定だったのだ。
「わかったわよぅ…」
 しぶしぶとサキは自分の席に向き直り、問題を解き始めた。
 
 ふっと教室が静かになった。

 受け持ち以上のことをする気は無かったので、夏服のしたに透けるサキのブラをぼんやりと眺めてみる。
 青っぽい縁と片紐でレースみたいな飾りはついていない。
 布地の色はわからないが……おそらく白か水色だろう。
 さっぱりとした色合いが、らしい、と思う。
 ひとしきり観察してからなんとなく校庭の方を見てみる。
「興味ないの?」
 それを見計らったかのようにサキから声をかけられた。
 まじまじと見過ぎて感づかれたか、と身を硬くする。
「な、なにが?」
「付き合ったとか、そういうのよ」
 胸を撫で下ろす。
「なんだ、それか」
「なんだとはなによ。気にならない?そういうの」
 また、プリントを中断し、ゆっくり振り向く。
 妙に真面目な顔をしていた。
「別に……」
 確かに他人がどうこう、というのに興味が無い。
「じゃあ、さ…」
 サキの声色に妙な湿度が篭る。
「ん?」
「私の事も?」
「どういうこった?」
 まあ、気にはなるかもしれないな、と思えた。
 幼稚園の頃からずっと一緒にいる訳だし。
「私、結構もてるんだよ」
 サキは妙に得意げに断言する。
 初耳だった。
 が、友人達からたまに可愛いな、とは言われている気がするし、無い話でもない、かもしれない。
「よく視線を感じるんだから」
「なんだそれ…」
 一気に脱力する。
「お前それ、自意識過剰っていうんだぞ?」
「なによ!気のせいだっての?さり気ない振りしてチラチラ見てるのは本当よ!?」
 また口がへの字になった。
「それはお前、透けたブラでも見てん、じゃ…」
 しまった、口が滑った。
 サキの変化は劇的で、さっと自分の胸を見下ろすと、
それを庇うように腕を組んで半身になり、ジト目で睨んできた。
「スケベ」
 頬も少し赤い気がする。
「なんだよ、見られるのが嫌なら、透ける色の着けてんなよ」
「そんなおばさん臭いのつけられないわよ!」
 あまりの剣幕に少し怯んでしまう。
「そ、そんなもんなのか……?」
「そうよ!だからじろじろ見ないの!」
「そんな事言ったって、お前も道歩いてて視界の端に点滅してたり、光ってるもんがあったら見るだろ?
そんな感じで見ちゃうんだからしょうがないだろ」
「なに、自分達がスケベなのを正当化してんのよ、変態」
「エロい人間が居なかったら人類滅亡しちまうぞ!?スケベと変態を一緒にするんじゃねぇ!」
 口で負けそうな気配だったので、無理やり切り返してみる。
「そんな屁理屈…」
「屁理屈じゃね~って!男は昔からそうなんだって、絶対!
あの子可愛いとか、胸大きいなとか、キスするとどんな感じかなとか、考えるんだって!」
 そこまで、言った途端、びくりとサキが身を竦ませ俯いた。
 言い過ぎたかもしれない。
「な、なあ?」
「……」
 顔を背けられる。
 調子に乗って引かれてしまっただろうか。どしんと腹の辺りが嫌な感じに重くなった。
「私にも?」
「あ?」
 サキがぽつりと問いかけてきた。
「私にもそんな風に思ったこと、ある?」
 表情が見えないので、はっきりとは解らないが、怒ってはいなさそうな声色だった。
 ここで、お前には無い、と言ってしまうのは話が拗れそうだ、と思い、多少ぶっきらぼうに答えた。
「まあ、たまには」
「そう、なんだ……」
 それっきりサキは黙り込む。
 二人の間に妙な緊張を孕んだ沈黙が流れた。
 相手の返事を待っているような、何かを話さなければならないような……
「ねぇ」
「なんだよ」
 沈黙を破ったのはサキの方だった。
「じゃあ、さ……想像通りか、試してみる?」
 何を言われたのか咄嗟に解らなかった。
「は?」


 目の前にうつむきながら視線を泳がせているサキが立っている。
 夕日の光量も落ちてきて、室内の方が明るく感じられるようになっている、そんな時間。
 パニックと緊張で頭の中がぐちゃぐちゃだ。
「その、ここじゃあんまり凄い事は駄目だけど、その……キスとか触るぐらいだったら、あの……」
 口ごもるサキを初めて見たナオだったが、感慨に思う余裕は無かった。
「お、おう……」
 そんな間の抜けた返事をしてから一歩踏み込み、
お互いのつま先が互い違いに横並びになるほどお互いの距離を詰めた。
 サキが潤んだ目で見上げてくる。
 見慣れたはずの顔が、まるで別人のように……可愛く見えた。
 頭の中に僅かにあった、なんでこんな事を言い出したのか、という疑問がその瞳の前に霧散する。
 サキがゆっくりと目をつぶり、あごを僅かに上に向けてくる。
 さあ、こい、という合図だろう。
 驚かせないようにゆっくりと肩の上からサキを抱きしめる。
 それでも、少し驚いたようにサキの体が揺れた。
 は、という吐息。どちらのものか、すぐに解らなくなった。
 
 緊張で僅かに強張った、でも瑞々しい唇を自分の唇に感じる。
 サキの唇の感触。
 こんなにも、興奮するとは思わなかった。
 
 もっとサキの唇を感じたくて、少しだけ首を捻りながら自分の唇でサキのそれをなぞる。
 唇が熱い。まるで唇が解けてしまっているようだ。
 サキの、甘い香り、腕の中の温かく柔らかな体、感じられる全てが頭の中を白く塗りつぶしていく。
 ふと、薄く目を開けてみると、サキが眉根を寄せて苦しそうにしていた。息を止め続けてるてるのか?
 慌てて唇を離す。
「ぷはっ!はっはっ…もう、長いよ…」
 サキが非難めいた視線を俺の腕の中から送ってきた。
「すまん、あ~、思ってた以上に、その、良くてさ」
「そ、そう……私も、その……良かったよ」
 なんだ、この雰囲気。気恥ずかしくて、でも心地いい……。
 サキがぐっと体をすり寄せ、甘えるように--俺にはそう感じられた--上目遣いに見上げてきた。
 その瞳を見返すと、自然と淫らにぬめった唇に目が吸い寄せられた。我慢できない。
「もう一回」
「うん……」
 また唇を合わせる。柔らかな感触を今度はやや冷静に感じられた。
 そうなると次に進みたくなる。
 ゆっくりとサキの唇を舐め、舌を差し込んだ。
 ビクリとサキの体が揺れ、脱力していた両手が俺の腰に添えられた。
 が、それだけで押し離そうという動きでは無かったので、そのまま続けた。
 例え抵抗する素振りを見せられても、興奮状態の俺が中断できたか怪しいが。
 舌はすぐに閉じられた歯に行き当たった。
 開けてくれ、とお伺いを立てるように歯を舌でなぞると、じわりと口を開けてくれた。
 閉じたままだと舌の長さが足りないので、こちらも思いっきり口を開け、サキの口腔に舌を進入させた。
 俺の舌がサキの舌と触れあう。
 びっくりしたようにサキの舌が縮こまった。
 それを追いかけて、舐める。
 サキがぎゅっと俺のシャツを握ってきた。
 舌の先端を触れ合わせるだけなのに、物凄い快感があった。
 夢中で舌をサキのそれに擦り付ける。
 サキも感じてるのか、ん、んっ、と口の中に漏れるくぐもった声が艶かしい。
 しばらくすると、受けてばかりのサキも舌を積極的に動かしてくるようになった。
 もう息を止めたりなどせず、唇と舌と同時に吐息も絡ませ合う。
 唇も思考もぐちゃぐちゃだった。
 
 カツン、と上履きの靴が廊下を叩く音が聞こえた。
 
 さっと顔を離す。
 サキはぽかんとしていたが、どんどん近づいてくる足音にすぐに気が付いて、慌て出した。
「うわ、うわ……どうしよ!?」
「とりあえず、口拭け!席座れ!」
「う、うん」
 サキがバタバタと着席し、ポケットからハンカチを取り出し、口に当てた。
 俺も座りながら口を左手で拭う。
 顎の先までねっとりと濡れていた。
「お前ら、まだやってたのか?」
 担任が教室に入ってきた。危ない所だった。
「もうこれ以上は学校に残しておけないからな、プリント提出して下校しなさい。」
 教卓の上に置いてあった書類に何事か書き込みながら中年の担任、松葉が指示してきた。
「あいよ~、サキいくぞ」
「……え?う、うん」
 まだぼんやりとしている、サキを促して、プリント片手に席を立った。
 
 
「いや~、焦ったな……」
 学校からの帰り道。もう日は沈み、夏の夜の雰囲気が住宅街に満ちていた。
「うん…」
 さっきから、うん、しか言わないサキに少し不安になる。
 いつもは下校の時なんか、黙ってる時間が無いほど喋るのに、俯き、とぼとぼと俺の後を付いてくる。
 おかしい。
「おい、どうした?」
 自分自身普段のテンションでは無く、凄く浮ついてるのだが、サキは沈み込んでるように見える。
 後悔、してるとか?おもった以上にがっつかれて引いてるとかか?
 そもそも、付き合っても無いのにああいう事したのが……
でも、誘ってきたのはサキで…男らしくない考えだな。
「んと…」
 サキが顔をあげる。
「なんか、興奮が抜けなくて……ははっ、こういう時どういう風にしたら良いんだろうねぇ?」
 いつもの調子で話し出すが、頬は上気し、目が潤んでいた。
「興奮ってお前……」
「ナオはしなかった?私凄かったよ~?ははっ」
 ケラケラ笑い始める。が、どこか笑い方が引きつっていた。
 いつもの調子に戻したいんだろう。ここは調子を合わせようか。
「そうだな!松葉が来なかったら最後までやっちまう所だったぜ!」
 サキの笑顔が頬を染めたまま凍りつく。
 しまった正直に言い過ぎた。言葉を選ぶべきだった。
「ナオのスケベ~、させてやんないよ~」
 が、笑顔が凍っていたのは一瞬で、サキはまたいつもの調子に戻った。
 言葉は否定だったが、なんだが救われた。
 後ろを歩いていたサキが隣に並ぶ。
「なんだよ~、自分で興奮したって言ってたくせによ」
「それはするよ!初めてだったんだから!ナオは違うの?」
 さらりと探りを入れられるが、これは怯む場所でもない。
「俺も初めてだって……してて解っただろ?」
「解らないわよ!イッパイイッパイだったんだから!」
「そ、そうか……」
「そ、そうだって言ってるじゃない……」
 また、僅かな沈黙。
 だが、さきと違って心地よい沈黙。
 不意にお互いの距離が近くなり戸惑っていたが、いつもの通りでいいのだ、と再認識したからだろうか。
 しばらくするとサキの家が見えてきた。俺の家はさらに5分ほど歩いた所にあるマンションだ。
「じゃあ、な」
「うん」
 なんとなく今日のオカズの事を考えながら、サキの家を通り過ぎようとすると、サキから声をかけられた。
「ねぇ、寄っていかない?」
「……は?」
 振り返ってサキの顔をマジマジと見つめると、ふっと目を反らされた。
 サキの家族(両親と妹)とはもちろん顔見知りで、サキが居ない時でも家に上げてもらえるぐらい仲が良い。
 この時間でも普通に部屋まで入れるだろう。
 だが、この状況でってことは。
「あ、あの!みんな居るから最後までは駄目だよ!?
だけど、そのさっきの復習みたいな事ならできるかなって…」
 何か言う前に捲くし立てられる。
 復習て。
「お前、凄い事いってる自覚ある?」
「う…」
 サキが顔を真っ赤にし、口ごもる、が、恥ずかしそうにしながらも、ぽつりぱつりと続けた。
「なんか、こう……もっとしたいの、キス……」
 やられた、降参だ。もうどうにでもなれ。
「じゃあ、お邪魔するかね?」
「うん、上がって」
 サキははにかむように笑ってから身を翻し、玄関の、扉を開けた。

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